3 巻から 8 巻までそれぞれに<人妻編>〜<炎上編>と
サブタイトルが付いていますが、この 6 冊分全てが、
<帥の宮編>という一つの大長編になっています。
帝の後継者を巡る陰謀に隠されていた、恐ろしい真実とは?
著/氷室冴子。
ジャパネスク 2 でもそうだったんですが、6 冊のうちの前半は
どうでも良さそうな話がダラダラ続き、かったるく見えました。
少しずつ陰謀は動き出していたんですが、余りに細かく気が長い
伏線なので、序盤の 3,4 巻辺りはつまらないと思っていました。
しかし、5 巻の後半から、話は急転直下、動き出します。
内大臣家の瑠璃姫と、右大臣家の高彬が、恋愛の末
とうとう結婚にまで至りました。しかし、名家同士の結婚は、
個人の恋愛で済まされるものではありませんでした。
摂関政治の世の中ですから、当人達の認識の及ばないところで、
様々な憶測と思惑を呼び起こしていたのです。
なんて素敵にジャパネスク 3〈人妻編〉では、
高彬のある誤解から煌姫が内大臣家に居候する事になります。
瑠璃姫は守弥の存在を知り、再会を果たします。
お互い高彬には秘密の、奇妙な関係が生まれます。
ここで既に帥の宮 (そちのみや) の名前が出てきます。
なんて素敵にジャパネスク 4〈不倫編〉では、
高彬が嫉妬の鬼と化し、瑠璃姫の元に乗り込んで狼藉を働きます。
瑠璃姫が誰かと密会しているという密告があったのです。
そこにいたのは守弥でした。
高彬がそこまで我を忘れたのも、帥の宮が折に触れて
瑠璃姫に興味を持っていそうな素振りを見せていたからでした。
それを知った瑠璃姫は、煌姫や守弥と協力し、
帥の宮なる人物を誘き出し、罠に嵌める計画を立てます。
なんて素敵にジャパネスク 5〈陰謀編〉では、突然、
子宝祈願御一行様という話になって面食らいます。内大臣家を
空っぽにし、態と隙を作り、帥の宮を誘い出す作戦なのです。
しかし、その計画は予想もしない方向に転がる事になりました。
ここに至りやっとこのシリーズに蠢くものの正体が見えてきます。
話が大きく動き出し、なんて素敵にジャパネスク 6〈後宮編〉では
瑠璃姫が後宮に乗り込みます。
次がなんて素敵にジャパネスク 7〈逆襲編〉 となり、
最後がなんて素敵にジャパネスク 8〈炎上編〉 なので、
最後は何かが炎上します。
これはジャパネスク 2 と同じパターンだと思いました。
詳しくは書けませんが、一連の事件の裏にあった真実も、
ある有名な物語に似ていると思いました。
今度の敵は、帥の宮です。“帥” とは大宰府の長官の事で、
その任に当たった親王が帥の宮と呼ばれていました。
この話の帥の宮は、今上帝である鷹男の少し年上の叔父ですが、
忘れられたような寂しい暮らしを送ってきました。
鷹男がそれを哀れに思い、彼に光の当たる地位を授けて
引き立ててあげたのです。
その帥の宮が、気の遠くなるような、だけど巧妙なやり方で、
自らの陰謀を成就させようと動きます。
しかし、お話なので事件を起さないと仕方が無いのだとは
思いますが、つくづく鷹男は可哀相な帝です。
1,2 巻では自分が狙われ、今度もまた朝廷を揺るがす大事件を
起こされる。しかも1,2 巻では自分が解決に乗り出しましたが、
今度は真相を何も知らされず完全に蚊帳の外です。そして
何も知らないまま、苦しみだけを背負わされる事になります。
このシリーズでは、鷹男が蚊帳の外になっている代わりに、
貧乏宮家の煌姫と高彬の乳兄弟の守弥が大活躍します。
この二人は物の怪憑きと既に自称してしまっている瑠璃姫をして
非常識、性格に問題があると言わしめる、ぶっ飛んだ二人です。
その自己中ぶりは、瑠璃姫が呆れ返り、抑える側に回る程です。
煌姫は嫌がらせばかりして前半は凄く嫌な奴だったんですが、
後半では大ピンチを救ったりして、瑠璃姫との友情が芽生えます。
でもそれも瑠璃姫が自分の生活の面倒を見てくれている事が
前提です。どこまでも現金な、即物的な姫なのです。
守弥は右大臣家の家臣なのに、何故か瑠璃姫に弱く、
呼びつけられてすっ飛んできては
用を言いつけられて言いなりになっています。
瑠璃姫にドギマギしてるのがめちゃくちゃ面白く、
本人は自覚していないけれど、これは瑠璃姫に・・・
と思わされますが、彼が最終的に、絶対的に大事なのは高彬です。
高彬の為となれば、いざとなれば、
瑠璃姫は平気で放ったらかしにされてしまいます。
守弥と煌姫が登場するのはジャパネスクアンコールからです。
それを読んでからじゃないと彼らと瑠璃姫の関係は分かりません。
だからジャパネスクシリーズの正しい読む順番としては、
1 巻、2 巻、アンコール、続アンコール、3 巻、4 巻〜となります。
リアルタイムで読んでいた私には当たり前の事だったのですが、
新規の読者にはこれが判らない人が多いようです。
8 巻のあとがきで、“次はまた番外編を書きたい” と
続ける意志を示していたのですが、残念ながら、これっきり
新作が作られる事は無いまま、著者は鬼籍に入ってしまいました。
そうそう鷹男を狙う輩を出せないだろうから、長編に関しては、
これ以上話の作りようが無かったのかも知れません。
でも、あの子供は果たして男だったのか女だったのか、
瑠璃姫と高彬に御ややはできるのか、融の恋の行方は?等々、
その後の彼らがどうなったのか、色々気になってしまいます。
番外編を作る余地は、充分にあったと思います。
源氏物語に宇治十帖があるように、ジャパネスクファミリーの
次の世代の話があっても面白かったと思います。
つくづく、惜しい人を、余りに早く喪ってしまったと思います。
サブタイトルが付いていますが、この 6 冊分全てが、
<帥の宮編>という一つの大長編になっています。
帝の後継者を巡る陰謀に隠されていた、恐ろしい真実とは?
著/氷室冴子。
ジャパネスク 2 でもそうだったんですが、6 冊のうちの前半は
どうでも良さそうな話がダラダラ続き、かったるく見えました。
少しずつ陰謀は動き出していたんですが、余りに細かく気が長い
伏線なので、序盤の 3,4 巻辺りはつまらないと思っていました。
しかし、5 巻の後半から、話は急転直下、動き出します。
内大臣家の瑠璃姫と、右大臣家の高彬が、恋愛の末
とうとう結婚にまで至りました。しかし、名家同士の結婚は、
個人の恋愛で済まされるものではありませんでした。
摂関政治の世の中ですから、当人達の認識の及ばないところで、
様々な憶測と思惑を呼び起こしていたのです。
なんて素敵にジャパネスク 3〈人妻編〉では、
高彬のある誤解から煌姫が内大臣家に居候する事になります。
瑠璃姫は守弥の存在を知り、再会を果たします。
お互い高彬には秘密の、奇妙な関係が生まれます。
ここで既に帥の宮 (そちのみや) の名前が出てきます。
なんて素敵にジャパネスク 4〈不倫編〉では、
高彬が嫉妬の鬼と化し、瑠璃姫の元に乗り込んで狼藉を働きます。
瑠璃姫が誰かと密会しているという密告があったのです。
そこにいたのは守弥でした。
高彬がそこまで我を忘れたのも、帥の宮が折に触れて
瑠璃姫に興味を持っていそうな素振りを見せていたからでした。
それを知った瑠璃姫は、煌姫や守弥と協力し、
帥の宮なる人物を誘き出し、罠に嵌める計画を立てます。
なんて素敵にジャパネスク 5〈陰謀編〉では、突然、
子宝祈願御一行様という話になって面食らいます。内大臣家を
空っぽにし、態と隙を作り、帥の宮を誘い出す作戦なのです。
しかし、その計画は予想もしない方向に転がる事になりました。
ここに至りやっとこのシリーズに蠢くものの正体が見えてきます。
話が大きく動き出し、なんて素敵にジャパネスク 6〈後宮編〉では
瑠璃姫が後宮に乗り込みます。
次がなんて素敵にジャパネスク 7〈逆襲編〉 となり、
最後がなんて素敵にジャパネスク 8〈炎上編〉 なので、
最後は何かが炎上します。
これはジャパネスク 2 と同じパターンだと思いました。
詳しくは書けませんが、一連の事件の裏にあった真実も、
ある有名な物語に似ていると思いました。
今度の敵は、帥の宮です。“帥” とは大宰府の長官の事で、
その任に当たった親王が帥の宮と呼ばれていました。
この話の帥の宮は、今上帝である鷹男の少し年上の叔父ですが、
忘れられたような寂しい暮らしを送ってきました。
鷹男がそれを哀れに思い、彼に光の当たる地位を授けて
引き立ててあげたのです。
その帥の宮が、気の遠くなるような、だけど巧妙なやり方で、
自らの陰謀を成就させようと動きます。
しかし、お話なので事件を起さないと仕方が無いのだとは
思いますが、つくづく鷹男は可哀相な帝です。
1,2 巻では自分が狙われ、今度もまた朝廷を揺るがす大事件を
起こされる。しかも1,2 巻では自分が解決に乗り出しましたが、
今度は真相を何も知らされず完全に蚊帳の外です。そして
何も知らないまま、苦しみだけを背負わされる事になります。
このシリーズでは、鷹男が蚊帳の外になっている代わりに、
貧乏宮家の煌姫と高彬の乳兄弟の守弥が大活躍します。
この二人は物の怪憑きと既に自称してしまっている瑠璃姫をして
非常識、性格に問題があると言わしめる、ぶっ飛んだ二人です。
その自己中ぶりは、瑠璃姫が呆れ返り、抑える側に回る程です。
煌姫は嫌がらせばかりして前半は凄く嫌な奴だったんですが、
後半では大ピンチを救ったりして、瑠璃姫との友情が芽生えます。
でもそれも瑠璃姫が自分の生活の面倒を見てくれている事が
前提です。どこまでも現金な、即物的な姫なのです。
守弥は右大臣家の家臣なのに、何故か瑠璃姫に弱く、
呼びつけられてすっ飛んできては
用を言いつけられて言いなりになっています。
瑠璃姫にドギマギしてるのがめちゃくちゃ面白く、
本人は自覚していないけれど、これは瑠璃姫に・・・
と思わされますが、彼が最終的に、絶対的に大事なのは高彬です。
高彬の為となれば、いざとなれば、
瑠璃姫は平気で放ったらかしにされてしまいます。
守弥と煌姫が登場するのはジャパネスクアンコールからです。
それを読んでからじゃないと彼らと瑠璃姫の関係は分かりません。
だからジャパネスクシリーズの正しい読む順番としては、
1 巻、2 巻、アンコール、続アンコール、3 巻、4 巻〜となります。
リアルタイムで読んでいた私には当たり前の事だったのですが、
新規の読者にはこれが判らない人が多いようです。
8 巻のあとがきで、“次はまた番外編を書きたい” と
続ける意志を示していたのですが、残念ながら、これっきり
新作が作られる事は無いまま、著者は鬼籍に入ってしまいました。
そうそう鷹男を狙う輩を出せないだろうから、長編に関しては、
これ以上話の作りようが無かったのかも知れません。
でも、あの子供は果たして男だったのか女だったのか、
瑠璃姫と高彬に御ややはできるのか、融の恋の行方は?等々、
その後の彼らがどうなったのか、色々気になってしまいます。
番外編を作る余地は、充分にあったと思います。
源氏物語に宇治十帖があるように、ジャパネスクファミリーの
次の世代の話があっても面白かったと思います。
つくづく、惜しい人を、余りに早く喪ってしまったと思います。